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ゼロ・エミッション(ZeroEmission)を目指して

*ゼロ・エミッション(zero emission)とは

国連大学が1994年に提唱した構想である。 正式にはゼロエミッション研究構想(Zero Emissions Research Initiative = ZERI)という。 emission は「エミッション」とローマ字読みされているが、英語の発音は「イミシャン」の方が近い。

ゼロ・エミッション(ZeroEmission)は、生産活動によって出される廃棄物をゼロにしようとするものです。循環型産業システムを目指し、全産業の製造過程を再編成することにより、新しい産業クラスターを構築しようとするものです。  また、循環型の社会システムにしていくには、企業の生産部門だけに止まらず、家庭や地域の廃棄物も最終的にゼロにすることも必要です。ゼロ・エミッションは自治体や地域団体などにもこの運動が広がりつつあります。  「少ない材料で効率の高い製品をつくる」「リユース(再使用)できる材料をできるだけ多く製品の中に組み入れる」「ある産業が出す廃棄物が他の産業の原材料になるような産業構造を考える」などの取組みは、企業の先進的な環境への取組みとして社会的な信頼度を高めるとともに、製造・流通コストの削減にもつながる有効なシステムとなります。

改善結果のフィードバック

環境目的・目標については年度初めなどに従業員に伝えていますが、進捗状況を知らせている会社となると少なくなります。  従って、従業員のインタビューでも環境目的・目標は話せても、現在の状況(進捗は順調なのか・遅れているのか、達成しているのか・未達成なのかなど)を回答できるケースはぐっと少なくなります。

やはり、自分たちが行った改善活動の結果をきちんと知らせることで達成感がでて、活動を熱心に進めることができるのではないでしょうか。  結果をフィードバックをしている会社では、グラフ等にして掲示をしているケースが多いですが、自主的に掲示を見ている従業員は意外と少ないかもしれない。  やはりきちんと口頭で知らせ、詳細は掲示、回覧、電子掲示板でというように複合的にコミュニケーションをとっていくことのが良いでしょう。

審査の活用

ISO14001の認証を取得している企業であれば、認証機関の審査を定期的に受けています。外部からのチェックの機会を、従業員の意識向上の場として活用することが考えられます。  一般の従業員と審査員が直接話をするのは、従業員インタビューの時です。審査登録機関により差があるため、従業員インタビューのサンプル数が少ない場合は、審査側に要望を出してもよいのです。

インタビューされる人は、審査側に自由に選んでもらいます。従業員にはインタビューをされる可能性があることをEMS事務局から事前に話しておきましょう。また、審査側からは、インタビューした結果の総評を話してもらうと良いでしょう。

以前、ある会社の審査で、従業員の方にインタビューをしたところ、回りにいた人が全員集まって、インタビューを聞き、自分が聞かれたら場合にはどう答えるかをシミュレーションしていましたた。  EMS事務局が特定の人のみインタビューをされる弊害を避けるため指導したとのことでした。この組織の一人ひとりの環境意識は、高いと感じられました。

本来業務と一体化する

いくら環境への意識が高くとも、環境を特別なものとして、日常業務と切り離していては活動が長続きしません。つまり、環境改善活動と本来業務を一体化するが意識を高めることの最大のポイントになります。  ここで本来業務とは、組織全体の本来業務( 消費者やお客様に販売している製品やサービス)、部門の本来業務(部門名、部門業務所掌にある業務)があります。  例えば製造業ならば製品の環境改善、製造部門ならば製造過程の環境負荷低減、品質管理部ならば不良品削減が本来業務といったものです。

本来業務に組織は最大の経営資源を投入しているため、その環境改善をすることは最大の効果をあげることができます。  一番効果があるところを改善することは、ISO14001の目的に沿ったことでもあります。  本来業務に関連する改善目標ならば、製品の付加価値向上、コストダウンなど経営的にもプラスになる場合が多いはずです。 もちろんコストアップになるケースもあり得ますが、どこまで行うかは組織の”姿勢”、”戦略”により判断することになります。

本来業務と一体化させるためには、できるだけ業務目標と環境目標を一致させることがヒントです。”資源の有効活用”、”効率化”の視点でみれば多くの業務目標は環境目標になり得ます。

業務目標を環境目標にというと従来と同じことをしていれば良いのかと思われるかもしれません。しかし日常業務に環境の視点を入れ、社会情勢を考え見直しするならば、例えば省エネルギーの目標もより挑戦的な設定になることもあるでしょう。

業務目標は、会社の利益だけでなく環境面で社会の利益にもなることが理解されれば、従業員のモラルアップにもなるはずです。

3 R 活動とは

3 R とは、Reduce、Reuse、Recycleの頭文字がRであることから3 Rと呼んでいます。3 Rの内訳は次のとおりです。
・Reduce(リデュース):製品設計の省資源化や長寿命化などによって、資源の消費量を削減します。
・Reuse(リユース):使われた製品を一旦回収して、必要に応じて適切な処置をし、製品として再使用したり、再利用可能な部品は再利用します。
・Recycle(リサイクル):一旦使われた製品や製造段階で発生した副産物を回収し、原材料として再利用(マテリアルリサイクル)したり、それが困難な場合には焼却熱をエネルギーとして再利用(サーマルリサイクル)します。

3 R 活動の基本は、資源の消費を削減し、製品は再使用し、それが不可能なら、資源にして再利用しようというものです。この基本的考え方を実行に移すには、特に製品のライフサイクル全体を見通したうえで、製品の設計段階から計画的に対応し、生産システムを構築し、環境に配慮した流通・消費システムを構築することが必要です。
省資源・省エネルギーによるコストダウンを目指す取組みは、地球環境の保全を図るという企業の社会的責任を果たすことにもなり重要です。もし、 ISO14001認証取得をしている組織で、環境目的・目標に3 R の観点がまったくなければ、この際、見直ししてみてはいかがでしょうか。

省エネルギーの推進

省エネルギーの推進は、地球温暖化対策を進めていくために不可欠です。このため、わが国では政府の指導のもと、エネルギーが消費される「産業」「運輸」「民生」各分野にわたり、積極的な省エネルギー対策が展開されています。また、「改正省エネルギー法」に基づき、工場、建築物および機械器具(自動車、家電製品など特定機器)について、エネルギーの使用の合理化に関する基本方針が定められています。

企業における省エネルギーへの取組みは、地球環境への負荷軽減に寄与するだけではなく、エネルギー効率改善によるコスト削減や、生産システムの革新にもつながります。省エネ推進のキーポイントは、次のとおりです。

1.省エネルギーの推進は、全員参加型の小集団活動が有効であり、省エネルギー担当者を決めて、権限を与える。
2.経営者が省エネルギーの方針(目標、期間、投資額など)を明確にして、これをふまえて、各工程ごとの推進計画表を作成し、その対策を推進する。
3.エネルギー使用の状況を把握して、改善案を立案し、これを推進する。

なお、改善案の立案にあたっては、まず身近な小改善の積み重ねが重要です。そして、従来の生産プロセスやサービスプロセスを維持しながらも部分的な設備投資の検討をします。さらに、生産工程、サービス提供工程そのものの改善による大きな効果がある省エネルギーの検討を行います。

環境関連法令の構成と概要

法令の構成は、通常、国会の議決を経て制定される「法律」、内閣が制定する「施行令」、 各省の大臣が定める「施行規則」、公の機関が公式に広く一般に知らせる「告示」、国の 機関が地方公共団体に出す命令である「通達」がある。また、地方自治体の議会で制定する 「条例」や公害防止協定のような当事者がとるべき内容を取り決めた「協定」がある。

ISO14001規格 4.3.2 法的及びその他の要求事項

組織は、その活動、製品又はサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるような手順を確立し、維持しなければならない。

この規格の要求事項では、大きく分けて2つのことを要求している。

1.「適用可能な法的要求事項を特定する」とあるが、特定する手順としては組織の環境側面に 適用されることが想定される環境関連の法規制を網羅的に洗い出して、適用を受けるものを 特定する方法と、反対に組織の設備のうち水質汚濁防止法や大気汚染防止法等で法の適用を 受ける特定施設を中心とした設備を網羅的に把握した後、許認可事項や届出義務、測定義務等 (その設備に適用される法的な要求事項は何かをチェックする方法がある)、また、適用さ れる事項を特定した後は定期的に見直し、最新の情報に更新することが重要となる。

2.「~を特定し、参照できる手順」の確立と維持することが要求されているが、「参照できる」 の実務的な解釈としては、組織の全従業員が自分で操作している機器設備等がどんな法規制の 適用を受けるのか知っておく必要があり、またその情報はどこで入手できるかを知っておく 必要がある。実際には法規制登録簿(施設・機器、規制、規制制定・改正日、基準値等が記載 されている)を作成し保管場所を定めておき、適宜更新することが要求されている。

環境関連法令の調査概要

「環境に関連する法規制」と言われると、一般的には環境六法だけを発想するが、実際には 環境六法以外にも労働安全衛生法、消防法、劇毒物取扱法、等も含まれる。指針や努力義務等、 どこまで含めるかは常識の範囲で組織の裁量によるところがある。

さらに、法令だけではなく都道府県から出される公害防止条例や組織が同意している住民との 協定も含まれ、範囲が広いことを認識しておく。

法規制の調査方法には、環境六法から該当するものを調査していく方法と設備・機械・化学物 質等から該当する関連法規制等を洗い出す方法、地方自治体へ直接問合せをする方法、業界団 体へ確認する方法等が考えられる。これらの方法を企業の実情に合わせて組み合わせる。
しかしどの方法も相当の労力と時間がかかる。調査した結果は、法規制一覧としてまとめる必 要があるが、作成する際のポイントは以下の通りである。

【ポイント】

  • 環境に関連する法規、条例、規制値等の要求事項の明確化を要求している
  • 情報入手の手順が確立し、最新の情報が維持されていることを要求している
  • 「その他の要求事項」については、明確に示されていないが、付属書(A.3.2 法的及びその他

の要求事項)において、次の3 項目例示されている。

付属書例示 実務的な意味
業界の行動規範 企業が従う義務が生ずる業界ガイドライン等
公的機関との同意事項 公害協定・住民協定等
規制以外の指針 行政・業界による指針・要綱

ISO14001 が要求する法的要求事項を満たすには、関連法規の名前をリストにしただけでは 事足りない。法規制に関しては、法律、条例を問わず、当該企業の事業に該当する部分に関して はすべてリストアップを行なう。但し、EMS 運用段階における最終的な法規制登録簿に掲載する のは、適用条件から大幅に外れているものは省いても構わない。
ISO 14001 の取得を目指すのであれば、継続的に最新のものを入手して維持できるような、仕組 みを作っておくことが要求される。最新版の情報の入手には以下のような手法がある。

① 検索参照図書  市販されている数千円程度の本から分厚い数万円の本がある。中小企業の法規制担当の方に お勧めできるのは、まず数千円の本を購入され環境法規制の概略を知っていただいた後に、該当 しそうな条文の詳細を官報あるいは環境六法の最新版で確認をする方法。また、それでも自分の 組織に該当するかどうか不安な場合は、環境法規制の専門家や行政当局に直接ヒアリングを実施 することが必要。

② インターネット  インターネットでの検索は非常に便利である反面、最新情報を担保するには少し注意を要する ということを認識して活用する必要がある。  最新情報は書物で出版されるよりもインターネットの方がすばやくかつ豊富に入手することが できるが、規制当局のホームページ以外で得られた情報に頼るのは危険ですので、官報あるいは 環境六法の最新版で確認をすることも場合によっては必要となる。

③ 規制当局への直接のヒアリング  条例の一部をホームページに掲載している地方自治体も少しずつ増加しているが、まだまだほ んの一部の地域に限られている。
認証取得している自治体では条例の問い合わせに対し「ISO14001 の法規制を調査しているので すが」と聞くとスムーズに知りたい条例の該当部署を紹介可能な仕組みが整備されていると思われる。

検索参照図書 環境六法、官報
関係市区町村へヒアリング 各都道府県条例集の入手、○○県庁水質環境課、○○県庁外気環境課
インターネット 環境庁ホームページ、各都道府県条例
確実な資料にて確定 各都道府県条例集、環境六法、市区町村への直接ヒアリング、(担当者名等のエビデンスを記録)

環境関連法規制で要求する義務についても整理してみる。

届出義務 (例)特定施設の設置・変更、大気、水質、騒音、振動、(注):悪臭については事前届出なし
記録義務 (例)水質測定記録、ばい煙量・濃度、マニフェスト、・省エネ法
測定義務 (例)水質測定、ばい煙量・濃度、(注)騒音、振動、悪臭については測定義務無し
報告義務 (例)事故時の措置(水濁)、公害防止管理者の選任、省エネ法

環境関連法規制等についてのFQA(よくある質問)

Q1 条例等の調査はどのように行なえばよいのか?
A1 決まった方法はないが、例えば、各都道府県の環境保全局に自社の業務内容を説明し、条例に該当するものはないかどうか窓口で確認し、それぞれ条例毎の担当部署や担当者を紹介しもらうなどの方法をとる。一般的に条例は法律の上乗せ、横出しの形となる。
Q2 法規制一覧の作成に市販されているパッケージソフトを用いてもよいか?
A2 「法律」に関しては市販されているCD-ROM 等の環境関連法規制のソフトやデータベースを利用して検索することが出来る。その場合に注意すべきなのは、法規制改廃をアップデートする頻度が1 回/年 程度である場合には、不適合となる可能性がある点を考慮する。
Q3 法規制の対象となる設備機器があり、サイズや能力で該当しない場合どうすればよいか?
A3 「適用対象外」と記載し、設備機器のサイズや能力を明記しておく。それにより将来的に適用基準値が変わってもスムーズに対応出来る。
Q4 法規制一覧を設備機器単位に作成してよいか?
A4 大型の設備機器を保有する製造業等では、機器単位に法規制が適用される場合も多い。そのため、設備機器を切り口に作成しても問題はない。

産廃処理業-焼却

産廃処理業-焼却   解説その1 > 解説その2 > 解説その3 > 解説その4

***解説その1 [#zca7ee85]

*廃棄物とは [#x7c50fe5]

ひとくちにゴミとか、廃棄物とか言うが、法律的な取扱いはどうなっているのであろうか。
わが国の廃棄物処理は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)に基づいて行われている。この法律は、それまでの「清掃法」に代わるものとして、1970年(昭和45年)の国会で制定され、改正が幾度もなされている。
法律の目的は、第1条では「廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図る」としている。総じて、廃棄物の抑制、減量、分別、再生を大きく打ち出していることが、この法律の趣旨である。

廃棄物処理法では、廃棄物を「ごみ、粗大ごみ、燃えがら、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれに汚染された物を除く)」と定義しており、さらにこれが「一般廃棄物」(一廃)と「産業廃棄物」(産廃)に分けられている。
産廃は事業活動により生じる廃棄物であり、燃えがら、汚泥など19種類が指定されており、排出事業者の責任においての処理が義務づけられている。
一廃は産廃以外のものをいい、「特別管理廃棄物」(特管物)と「その他の廃棄物」とに大別されている。特管物の中のばいじんは捕集灰を指す。
法体系としては、整然と分類されているが、現実のごみは、たとえ分別収集が行われていたとしても、可燃ごみ中に不適ごみが混入することは避け得ない。そのことが、ごみ処理問題の原因の一つとなっている。物の製造から始まり、廃棄に至るまで、メーカー、消費者など全ての主体の努力が必要な理由である。

*ごみを焼却する目的 [#t922c5ca]

ごみ焼却の目的は、以下の3項目にまとめることができる。
①無害化
ごみ中には、腐敗物、病原菌等の感染性物質などが含まれるが、これらは焼却炉内の高温状態下で、有機物は無機化されて安定化する。またPCB(ポリ塩化ビフェニール)に代表される有害化学物質も、焼却によって分解無害化できるものが多い。但し、これら無害化できるものは、有機性物質に由来するものに限られ、重金属類などは無害化できない。また、焼却過程途中でダイオキシンなどの新たな有害物質が生成されることもあり得る。

②無臭化
①とも関連するが、700℃以上で高温焼却することにより臭気成分は熱分解し、無臭化できる。
無害化、無臭化、減量化のほか、発電や熱利用によるエネルギー回収があげられる。また、前述の他の処理方法には、多量.迅速な処理には不向きな点があり、現実的な対応として本方式が適用されることが多い。しかし、ダイオキシン、塩化水素など有害物質の発生、処理コストの増大、資源の浪費などの諸問題もある。諸問題の解決には製品LCA(Life Cycle Assessment)の推進や、分別収集の徹底、資源化に対する有効な支援措置などを行う必要がある。

③減量化
ごみの成分は、可燃分、水分、灰分に分類することができる。このうち、可燃分および水分は、焼却または蒸発によって、炭酸ガス、水蒸気となり大気中に拡散し、その分、ごみの重量および容積が減少する。容積は5~10%となり、埋立地の寿命が延びる。

*焼却方式の種類 [#y981e60b]

焼却施設の主目的はごみの焼却であり、その役目を担う焼却炉は、焼却施設の心臓部を成すものである。この焼却炉の形式の違いにより、焼却方式は大きく、ストーカ方式、流動床方式、直接溶融方式の3種類に区分できる。このうち、ストーカ方式は焼却炉の主流であり、最も歴史が古く、また施設数も圧倒的に多い。それに対して後二者は、ごみ焼却炉としては比較的歴史が新しく、いずれも他産業の工業炉の応用であり、ストーカ方式にはない特徴を持っている。
ごみ炉の形式としては、この他に回転方式(ロータリーキルン)があり、産業廃棄物にはよく使用されるが、一般廃棄物での使用は少ない。ここので記述は省略。

■ストーカ方式
ストーカ炉は、小型炉から大型炉まであらゆる炉に用いられており、各炉メーカーは火格子の形状、材質、構造について研究と実績を重ね、それぞれに特徴がある。特に、使用状況が高熱、腐食、磨耗といった苛酷な条件下にあり、その良否はごみ焼却能力に直接影響を及ぼす。炉形としては、ベルトコンベヤのように火床全体が動く移床式(変形としての回転ローラ式)と、階段状に配置された火格子が前後動を行う階段式とに大別できる。中型炉以上では、階段式の採用が多い。ストーカ方式のポイントは、火格子の耐熱、耐磨耗と、燃焼空気の適切な配分にある。

■流動床方式
流動床炉は、炉内にある砂などの高温流動媒体を押込み空気で攪拌し、ごみを浮遊燃焼させるものである。元来が粉体など均質、軽量の物に適するとされ、ごみなど不均質の物には不向きとされていた。ストーカ炉以外のメーカーにより開発され、 1975年(昭和50年)頃より実用化され、現在では能力200トン/日級の炉も稼働している。炉内に、可動部がない、起動時間が短いなどの特徴がある。ごみの定量供給が難しく、そのため燃焼が間欠的になりやすく燃焼制御に工夫がいる。また捕集灰がストーカ炉より多い。

■直接溶融方式
縦型のシャフト炉であり、製鉄所の高炉等の応用である。この形式は、ごみとコークスを炉頂部より供給し、下部から酸素濃度を上げた空気を供給、コークスの燃焼熱とごみの燃焼熱で下部に残留する灰等を溶融する。この方式は、ごみを燃焼・焼却すると同時に灰等を溶融できる特徴を有する。ただし、そのためにコークスなど、他の化石燃料を必要とする。また、炉の操業に特殊な技術を必要とする。コークスの代わりに炉下部にバーナーを設けて、灯油などを用いるタイプもある。

***解説その2 [#q5664ec2]

*焼却処理の特徴 [#lb00fad3]

ごみの処理処分方法としては、焼却処理の他に、直接埋立、たい肥化など、いろいろな方法があるが、ここでは他の処理方法と比較して、焼却処理の特徴、長短について環境との関連でまとめてみる。

■焼却処理
長所としては、減量化、無害化、無臭化のほか、発電や熱利用によるエネルギー回収があげられる。また、前述の他の処理方法には、多量・迅速な処理には不向きな点があり、現実的な対応として本方式が適用されることが多い。しかし、ダイオキシン、塩化水素など有害物質の発生、処理コストの増大、資源の浪費などの諸問題が山積しており、見直しの気運にある。今後は、これらのことを十分に考慮しつつ、安全で安価な焼却処理を実現しなければならない。そのためには製品LCA (Life Cycle Assessment)の推進や、分別収集の徹底、資源化に対する有効な支援措置などを行う必要がある。

■再生、再利用
限りある資源を有効利用することは、特に資源小国であるわが国にとって必須であり、今後おおいに推進すべきである。この適用には、資源化技術の中には未熟なものがままある。方法によっては前処理に多量のエネルギーが必要、需要のバランスに欠けるなどの問題があり、これらをよく吟味し、克服しなければならない。

■埋立処分
埋立地が十分ある場合には、最も簡単で手取り早い方法で経済的である。近代以前のように、ごみの主成分が動植物で工業製品などが少ない場合には、地中に埋めるか覆土を行うかすれば比較的問題は少ない。「土より生じたものを土に帰す」方法である。しかし、現在では、そのようなことが通用しなくなっている。問題点としては、土壌の汚染、浸出水による水質汚濁、メタンなど地球環境破壊物質の発生、ごみ収集車の交通量の増大などがあげられる。そして何よりも、ただでさえ少ない埋立処分地の逼迫に拍車をかけることになる。

■たい肥化
腐敗性有機物の微生物による分解作用を利用した処理方法である。肥料や土壌改良材として利用できる。また、ごみ中の炭素分のうち30%前後は、Co2に変化することなく、最終的に新しい微生物の細胞に同化するので、地球温暖化防止の面でも優れている。しかし、ガラス、重金属など有害物の除去が必要、製品であるたい肥の利用時期が限られ保管場所が必要、残置が30%と多く発生する、大都市域では適用しにくいなどの問題がある。

*ごみの資源化 [#y640ac80]

ごみの資源化は、廃棄物処理法の精神である、廃棄物の抑制、減量、再生などを実現するために、大変重要なテーマである。資源化は、大きく物質回収とエネルギー回収とに大別できる。
焼却施設に限らず、ごみ処理の中間処理施設を計画する場合において、どのような資源化技術を採用するかは、非常に大切である。また逆に、どのような資源化を推進したいかによって、中間処理の内容が限られてくる。いかなる中間処理方式を採るにせよ、何らかの資源化を盛り込まない中間処理施設は考えられないので、技術的、経済的、社会的な面での慎重な検討が必要である。

■物質回収
物質回収方式を採用するについては、次のような諸条件の検討が必要である。
①物質回収を行う場合には、固々分離、固液分離等さまざまな単位操作が必要となるが、これらの技術の中には、実用上問題なものがある。
②処理過程での資源化不適物および処理残置について、最終処分の対策を確立する必要がある。また火災、爆発等に対して安全対策を確立する必要がある。
③処理経費を抑制し、回収効率を向上するために、分別収集の徹底や手選別を組み込んだシステムの採用を考える。
④再生品は価格の変動があるので、安定的な需要見通しや引取先を確実にする。また、経済効果を過大に見込まないこと。

■エネルギー回収
エネルギー回収は、直接的な熱回収と間接的な燃料回収とになる。また熱回収は、発電と熱利用とになる。
①ボイラー等の熱交換器について、排ガスの性状をよく検討して、高温および低温腐食が起きないように、構造、温度などを適切に設計する。
②発電については熱効率の低いことが問題であるので、効率の向上に努める必要がある。ただし、熱利用とのバランスを考慮して、低温域の廃熱の利用をもっと推進する必要がある。
③電気や熱の利用先をあらかじめ検討し、経済的に問題がないようにする。
そのためには、施設の立地条件が非常に大切である。
④燃料回収(油、ガス、 RDF(Refuse Derived Fuel))は、その製造や運搬にエネルギーが必要である。また一般に純度も劣るので、使用先の確認が必要である。
⑤燃料の追い焚方式を採用する場合は、経済性を十分考慮のことが必要である。

*焼却灰の行方 [#y985537d]

焼却処理は先に述べたように中間処分であり、焼却施設の産物である焼却灰は、最終処分をしなければならない。最終処分の方法としては、埋立処分と資源化利用に大別できるが、その大部分は最終処分場に埋立される。ここの主題は焼却技術であるが、ここで最終処分場について考えてみたい。

埋立処分を行うに当たって、まず考えなければならないことは、環境影響の抑制と処分場の跡地利用である。そのためには、住民の同意を得たうえで、自治体の総合的な計画を策定し、文化的な施設や公園などをつくることも考える必要がある。未来に環境問題を先送りするような施設であってはならない。なお、焼却灰の中で、捕集灰は、所定の処理をした後でないと、埋立処分はできない。
さて、最終処分場は、廃棄物処理法によりその施設方法が規定されており、安定型処分場・管理型処分場・しゃ断型処分場に区分できる。

■安定型
ガラス・陶磁器ぐず、金属ぐず、廃プラスチック類、建設廃材、ゴムくずのいわゆる「安定5品目」(注1に限られ、埋立による浸出水がないということが前提となっている。ただし、異品目の混入・付着により問題を起こしやすい。構造的には崩壊を防止するためのえん堤を設けるだけでよい。

■しゃ断型
有害物質を含む産廃で、固化処理等不溶対策ができないものに適用する。上部には屋根を設け、側面、底部はコンクリートで完全にしゃ断する。また埋立終了後は、コンクリートで蓋をする。

■管理型
最も一般的な処分場であり、重金属等の有害物質が公共水域に流出しない物に適用する。底部、側面はしや水シートを敷くなどのしや水工事を施し、浸出水を集水して無害化できる汚水処理装置が必要である。一般廃棄物の処分場は全てこの型に限られる。埋立とは、要するに地中に生息する微生物による有機物の分解作用を利用したものである。埋立途中(完了後も)では、メタンなどの可燃性ガスが発生するので、火災・爆発防止のためにガス抜管を設ける。なお、このガスを集めて燃焼させ、発電や熱利用を行っている施設もある。また、埋立時にはハエ、蚊などの害虫の発生を防ぐため、定期的な覆土を必要とする。

***解説その3 [#t728c647]

*ごみ焼却と地球温暖化防止 [#jb605ab0]

1997年12月に京都で開催された「地球温暖化防止京都会議」(COP3)は、改めて全地球的観点から二酸化炭素(CO2)などの温暖化物質削減の必要性を認識し、先進国平均での削減率5%達成義務という一定の成果をあげた。この数字の達成は決してなまやさしいものではないが、将来世代への贈り物として、あらゆる主体の知恵と努力により実現しなければならない(日本は6%削減が義務)。

そのような条件の下、ごみ焼却を始めとして、ごみ処理に与えられた課題もまた深くかつ重い。差し当たり以下のような施策によって、 CO2削減の達成に寄与しなければならない。
①限りある資源を有効利用するために、ごみの減量化や資源化を実現し、焼却量全体の削減を図ることにより、CO2を減少する。この方法は製造段階でのCO2削減につながり、効果が大きい。

②焼却するごみに対しては、ごみ発電を行うことにより、化石燃料使用量の減少を実現する。資源エネルギー庁の「エネルギー導入大綱」でも述べるように、2010年には400万kWの発電を見込んでいる。

③埋立処分場においては、地球温暖化物質であるメタン(CH4)の回収を行い、CH4の燃焼により発電を行う(CH4はCO2より温暖化効果大)。

④ごみ焼却施設は、市街地内において数万㎡と比較的広い敷地面積を有する。その特性を生かして、工場棟の屋根上での太陽電池の敷設を行う。これらの措置を積極的に採用することにより太陽電池の価格低下にもつながり、波及効果も期待できるだろう。

*ごみ焼却の課題 [#ne761f45]

ごみ焼却の基礎として、ごみ焼却の周辺事項も含めて全般的に述べてきたが、最後に、ごみ焼却およびその周辺事項の課題について、考えてみたい。

限りある資源の有効利用と環境負荷の低減を考慮すると、私たちの社会経済活動は、従来型の大量生産・大量廃棄はもはや許されず、廃棄物を有効利用する資源循環型社会の構築に沿う方向に向かう必要がある。

■廃棄物の発生抑制とリサイクル
環境基本計画にも示されているが、ごみはそれを減らすということが第一義であり、その上に廃棄物のリサイクル・再利用がある。廃棄物は混ぜればごみ、分ければ資源という言葉があるように、事務所や家庭では分別してごみを出す努力が求められる。循環型社会の構築を実現するため国の施策として再生資源利用促進法、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法の施行がなされている。

■マテリアル・リサイクル
生産工程上で端材を直接原料に戻せる場合が一番利用効率は高いが、それ以降は分別排出・分別収集が不可欠である。収集方式として、例えばデポジット方式、あるいは自治体による収集方式が取られる。
いずれにしても、収集には費用が掛かり、また再生コストを必要とする。一般的に、再生品は買い上げ価格が低いので、税法上の特典等により経済的に成り立たせる必要がある。

■サーマル・リサイクル
紙・プラスチック・厨芥等で、リサイクルの流通網に乗らなかったごみは、衛生処理、埋立地の確保のため焼却処理される。これからは100トン/日以上のボイラー付焼却炉あるいはRDF燃焼ボイラーが増える傾向にあるが、RDFには解決すべき多くの課題がある。一方、リサイクルの進展で、ごみの組成の変化や発熱量の低下等が予想されるため、適切な対応を必要とする。

■ごみ焼却施設
今後のごみ焼却施設は、熱利用をさらに推進し、また環境に対する影響をより少なくしなければならない。加えて、下記のような課題に取り組む必要がある。
①微量有害物質について疫学上の解明により、受認限度とコストの関係を明らかにし、合理的な施設とする。
②市民の理解と教育を深め、白煙防止や過度な建物意匠を抑制する。
③民間委託や適切な規制緩和により、建設費および運営費を低減する。

***解説その4 [#nee4d03d]
*ダイオキシンとは [#r5ed713d]

人間が作った最も強い毒といわれるダイオキシンが、なぜごみを焼却すると出てくるのだろうか?。
ダイオキシンは炭素と水素からできた二個の環状の炭化水素(ベンゼン環)の間に、酸素がはさまった形をしている。全部で八つある水素原子のいくつかが塩素に置き換えられたのが、ダイオキシン類である。
間の酸素の数が二つのものをダイオキシン、一つのものをフランといい、両方を合わせて「ダイオキシン類」と呼んでいる。

■ダイオキシンの発生源
簡単にいえば、有機物と塩素が存在すればダイオキシン類ができるのだから、ダイオキシン類は、ごみの焼却だけから発生するのではなく、全ての「燃焼」という化学反応によって生じることになる。自動車の排ガス、森林火災、たばこの喫煙など、身近な出来事からも発生する。
また、紙パルプの塩素漂白過程でも生成されるし、クロロフェノール、塩素系農薬などの有機塩素化合物の生産過程における不純物として生成されることもある。
1960年代にベトナム戦争でばらまかれた枯葉剤にも不純物として相当量のダイオキシン類が含まれていたといわれる。
しかし、現状では、ごみ焼却が発生の大半を占めるのは事実であり、1997年8月の大気汚染防止法の一部改正においては、廃棄物焼却炉と製鋼用電気炉からのダイオキシン類が指定物質に定められた。

■ごみ焼却とダイオキシン
では、ごみを焼却すると、どうしてダイオキシン類が発生するのか。
その原因には、以下のいくつかが考えられる。
①ごみ中に含まれていたダイオキシン類が分解されずに排出される場合。
②クロロフェノール、クロロベンゼン、 PCBのような似た構造を持つ物質(前駆物質と呼ぶ)が炉内で反応してダイオキシン類になる場合。
③排ガスの冷却過程で、前駆物質などの有機物がダイオキシンに変わる場合(新合成、デノボ合成などと呼ばれる)。
こうしてできたダイオキシン類の全てに毒性があるわけではなく、塩素の付く位置、数により毒性は異なり、1-3塩化物は無毒性とされる。4-8塩化物については、最も毒性の強い2.3.7.8の位置に塩素が付いた4塩化物を基準にしてダイオキシン類の毒性値を表している。

*ダイオキシンの発生抑制 [#fa8090c3]

ごみ焼却におけるダイオキシン類の発生は、安定した完全燃焼によってダイオキシン類や前駆体を高温分解することで抑制できる。
この抑制には、温度(Temperature)、時間(Time)、攪拌(Turbulence)の3条件をコントロールすることが必要となる。この3条件は、その頭文字をとって3T条件とも呼ばれる。具体的には次のことが重要となる。

① 温度(Temperature)は、焼却炉内で燃焼ガス温度を高温に維持すること
② 時間(Time)は、燃焼ガスの滞留時間を十分に確保すること
③ 攪拌(Turbulence)は、燃焼ガス中の未燃ガスと燃焼空気との混合攪拌を行うこと

焼却炉のガイドラインでは、新設炉に対し、燃焼温度850℃以上(900℃以上が望ましい)、滞留時間2秒以上、かつ、炉形状や2次空気の供給方法を考慮することにより、効果的な燃焼ガスの攪拌を行い、完全燃焼を達成するよう定めている。

不均一な性状の燃料であるごみを安定燃焼させるためには、ごみの攪拌、定量供給、適正負荷運転も重要なことである。そのために、ごみの供給・ごみピット内のレベル調整・ごみの積替え・ごみの混合攪拌を自動的に行うごみクレーン自動運転・ボイラー蒸発量・ごみ処理量・排ガス中酸素濃度などを自動的に制御する自動燃焼制御装置が開発ざれ実用化されている。

もう一つのダイオキシン類発生要因であるデノポ合成(新合成)の防止に対しては、燃焼ガスの急冷および低温化が有効である。デノポ合成は、300℃付近で最も発生しやすいと言われているので、集じん機入口での排ガス温度をおおむね200℃以下まで低減するよう、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に定められている。

冷却方法には、ボイラーエコノマイザーの設置、水噴射による直接冷却、空気式ガス冷却器による間接冷却、冷空気の混合による直接冷却等がある。
集じん機、特にバグフィルターの場合、入口での排ガス温度を低減することは、ダイオキシン類だけでなく、重金属類や乾式排ガス処理における酸性ガス(塩化水素、硫黄酸化物)の除去効率が向上するので、この点でも好ましい。

排ガスの冷却方式に廃熱ボイラーや空気加熱器を使用する場合、伝熱面上に多量のダストが付着堆積すると、デノボ合成を促進することになる。したがって、廃熱ボイラーや空気加熱器はダストが付着堆積しにくい構造とする。
また、付着堆積したダストを除去する装置(スートブローやハンマリング装置)の設置もダイオキシン類の発生抑制対策の一つである。

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環境マネジメントシステム改善の方向性 

環境マネジメントシステムの活動テーマで、いわゆる”紙・ゴミ・電気”と言われる定番の活動があります。しかし、この活動にいつまでもしがみついていてはシステム運用のマンネリを招きます。これを打破することが求められています。 著しい環境側面、法的およびその他の要求事項は現状分析型であり、それ以外の考慮事項はデザインアプローチ型の目的・目標設定といえるかもしれません。

例えば、事業上の要求事項として中期経営計画の達成指標としての設定や、利害関係者の見解を考慮して環境格付けや環境経営度調査のランキングを高めるなどの環境目標もあり得ます。また、自社のもつ優れた技術を環境関連用途に応用するなどの目標設定も戦略的です。これらのテーマは環境側面の特定からは抽出されにくいので、デザインアプローチ的に「こうありたい」「こういう方向を目指したい」として目標設定するということです。

決して、もう環境側面を考慮しなくてよいということではありません。現状分析により足元の環境上の課題をしっかり押さえた上で、中長期的に自社の将来を見据えて戦略的テーマに取り組んでいくことが重要です。その際、公示されているISO14001の有効性を高める資料などを参考にすると方向付けの判断のよりどころになるでしょう。
例えば、①長期的な視野にたった「息の長い」「粘り強い」活動、②本来業務(ビジネスプロセス)における活動、③社会(ステークホルダー)から信頼される活動、といった活動が環境マネジメントシステムの有効性を高める方向として提唱されています。
設定・レビューする目標を検討する際に、期待する達成効果も検証するでしょうが、地球・地域環境にどのような好影響を与えるかという評価軸とともに、自社の経営にどのように貢献するかという視点でも評価するとよいのではないかと思われます。EMSの効果を直接的な地域・地球環境への好影響だけに限定してしまうと、取り組みテーマも狭めてしまうことになるからです。
自社の経営に好影響を及ぼすことが、安定した企業活動を通じて社会貢献にもつながり、最終的に環境にも好ましい影響を与えると考えてもいいのではないでしょうか。「風が吹くと桶屋が儲かる」式の発想で広がりを持たせるとよいでしょう。

環境会計

 環境会計とは何のことでしょうか。環境省の定義では「企業などが持続可能な発展を目指して、社会との良好な関係を保ちつつ、環境保全への取組みを効率的かつ効果的に推進していくことを目的として、事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り定量的(貨幣単位または物量単位)に測定し伝達する仕組み」とされています。

 社内的には、経営者や関係部門による環境情報システムとしての環境会計の利用を通して、環境保全対策に要したコストとその効果を数値で捕まえ評価することによって、その活動をより効果的なものにするのに有効とされています。社外的にはその結果を公表することによって、企業の社会的信頼を高め、社会的評価を確立していくことにつながるとされています。

 環境省は、環境会計に関する情報の提供側と受け手の双方にとって、共通の枠組みとなることを目指した「環境会計ガイドライン」を、また、その理解を容易にするため、Q&A形式によるガイドラインの解説や環境会計への取組事例などをまとめた「環境会計ガイドブック」を公表しています。また、「環境会計支援ソフトウェア」は、環境省がホームページ上で、それに基づいて企業などが自社の環境会計情報を集計し、その情報をネットに送信し、ホームページ上で公開することもできる仕組みです。