環境関連法令の構成と概要

法令の構成は、通常、国会の議決を経て制定される「法律」、内閣が制定する「施行令」、 各省の大臣が定める「施行規則」、公の機関が公式に広く一般に知らせる「告示」、国の 機関が地方公共団体に出す命令である「通達」がある。また、地方自治体の議会で制定する 「条例」や公害防止協定のような当事者がとるべき内容を取り決めた「協定」がある。

ISO14001規格 4.3.2 法的及びその他の要求事項

組織は、その活動、製品又はサービスの環境側面に適用可能な、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を特定し、参照できるような手順を確立し、維持しなければならない。

この規格の要求事項では、大きく分けて2つのことを要求している。

1.「適用可能な法的要求事項を特定する」とあるが、特定する手順としては組織の環境側面に 適用されることが想定される環境関連の法規制を網羅的に洗い出して、適用を受けるものを 特定する方法と、反対に組織の設備のうち水質汚濁防止法や大気汚染防止法等で法の適用を 受ける特定施設を中心とした設備を網羅的に把握した後、許認可事項や届出義務、測定義務等 (その設備に適用される法的な要求事項は何かをチェックする方法がある)、また、適用さ れる事項を特定した後は定期的に見直し、最新の情報に更新することが重要となる。

2.「~を特定し、参照できる手順」の確立と維持することが要求されているが、「参照できる」 の実務的な解釈としては、組織の全従業員が自分で操作している機器設備等がどんな法規制の 適用を受けるのか知っておく必要があり、またその情報はどこで入手できるかを知っておく 必要がある。実際には法規制登録簿(施設・機器、規制、規制制定・改正日、基準値等が記載 されている)を作成し保管場所を定めておき、適宜更新することが要求されている。

環境関連法令の調査概要

「環境に関連する法規制」と言われると、一般的には環境六法だけを発想するが、実際には 環境六法以外にも労働安全衛生法、消防法、劇毒物取扱法、等も含まれる。指針や努力義務等、 どこまで含めるかは常識の範囲で組織の裁量によるところがある。

さらに、法令だけではなく都道府県から出される公害防止条例や組織が同意している住民との 協定も含まれ、範囲が広いことを認識しておく。

法規制の調査方法には、環境六法から該当するものを調査していく方法と設備・機械・化学物 質等から該当する関連法規制等を洗い出す方法、地方自治体へ直接問合せをする方法、業界団 体へ確認する方法等が考えられる。これらの方法を企業の実情に合わせて組み合わせる。
しかしどの方法も相当の労力と時間がかかる。調査した結果は、法規制一覧としてまとめる必 要があるが、作成する際のポイントは以下の通りである。

【ポイント】

  • 環境に関連する法規、条例、規制値等の要求事項の明確化を要求している
  • 情報入手の手順が確立し、最新の情報が維持されていることを要求している
  • 「その他の要求事項」については、明確に示されていないが、付属書(A.3.2 法的及びその他

の要求事項)において、次の3 項目例示されている。

付属書例示 実務的な意味
業界の行動規範 企業が従う義務が生ずる業界ガイドライン等
公的機関との同意事項 公害協定・住民協定等
規制以外の指針 行政・業界による指針・要綱

ISO14001 が要求する法的要求事項を満たすには、関連法規の名前をリストにしただけでは 事足りない。法規制に関しては、法律、条例を問わず、当該企業の事業に該当する部分に関して はすべてリストアップを行なう。但し、EMS 運用段階における最終的な法規制登録簿に掲載する のは、適用条件から大幅に外れているものは省いても構わない。
ISO 14001 の取得を目指すのであれば、継続的に最新のものを入手して維持できるような、仕組 みを作っておくことが要求される。最新版の情報の入手には以下のような手法がある。

① 検索参照図書  市販されている数千円程度の本から分厚い数万円の本がある。中小企業の法規制担当の方に お勧めできるのは、まず数千円の本を購入され環境法規制の概略を知っていただいた後に、該当 しそうな条文の詳細を官報あるいは環境六法の最新版で確認をする方法。また、それでも自分の 組織に該当するかどうか不安な場合は、環境法規制の専門家や行政当局に直接ヒアリングを実施 することが必要。

② インターネット  インターネットでの検索は非常に便利である反面、最新情報を担保するには少し注意を要する ということを認識して活用する必要がある。  最新情報は書物で出版されるよりもインターネットの方がすばやくかつ豊富に入手することが できるが、規制当局のホームページ以外で得られた情報に頼るのは危険ですので、官報あるいは 環境六法の最新版で確認をすることも場合によっては必要となる。

③ 規制当局への直接のヒアリング  条例の一部をホームページに掲載している地方自治体も少しずつ増加しているが、まだまだほ んの一部の地域に限られている。
認証取得している自治体では条例の問い合わせに対し「ISO14001 の法規制を調査しているので すが」と聞くとスムーズに知りたい条例の該当部署を紹介可能な仕組みが整備されていると思われる。

検索参照図書 環境六法、官報
関係市区町村へヒアリング 各都道府県条例集の入手、○○県庁水質環境課、○○県庁外気環境課
インターネット 環境庁ホームページ、各都道府県条例
確実な資料にて確定 各都道府県条例集、環境六法、市区町村への直接ヒアリング、(担当者名等のエビデンスを記録)

環境関連法規制で要求する義務についても整理してみる。

届出義務 (例)特定施設の設置・変更、大気、水質、騒音、振動、(注):悪臭については事前届出なし
記録義務 (例)水質測定記録、ばい煙量・濃度、マニフェスト、・省エネ法
測定義務 (例)水質測定、ばい煙量・濃度、(注)騒音、振動、悪臭については測定義務無し
報告義務 (例)事故時の措置(水濁)、公害防止管理者の選任、省エネ法

環境関連法規制等についてのFQA(よくある質問)

Q1 条例等の調査はどのように行なえばよいのか?
A1 決まった方法はないが、例えば、各都道府県の環境保全局に自社の業務内容を説明し、条例に該当するものはないかどうか窓口で確認し、それぞれ条例毎の担当部署や担当者を紹介しもらうなどの方法をとる。一般的に条例は法律の上乗せ、横出しの形となる。
Q2 法規制一覧の作成に市販されているパッケージソフトを用いてもよいか?
A2 「法律」に関しては市販されているCD-ROM 等の環境関連法規制のソフトやデータベースを利用して検索することが出来る。その場合に注意すべきなのは、法規制改廃をアップデートする頻度が1 回/年 程度である場合には、不適合となる可能性がある点を考慮する。
Q3 法規制の対象となる設備機器があり、サイズや能力で該当しない場合どうすればよいか?
A3 「適用対象外」と記載し、設備機器のサイズや能力を明記しておく。それにより将来的に適用基準値が変わってもスムーズに対応出来る。
Q4 法規制一覧を設備機器単位に作成してよいか?
A4 大型の設備機器を保有する製造業等では、機器単位に法規制が適用される場合も多い。そのため、設備機器を切り口に作成しても問題はない。